ペップ・グアルディオラの戦術 11-12

どうも皆さんこんにちは。footballpossessです。

今回もペップバルサのポゼッションサッカーの戦術やっていこうかなと思います。

前回、2010-11シーズンのバルサの解説を致しました。ペップバルサのポゼッションはスピードアップを図るためのメリハリをつけるためだとご説明致しました。

メリハリの分岐になるのがバイタルエリアであり、バイタルエリアにスペースをつける為に中盤を崩すことに専念しました。中盤を崩したのち、スピードアップを図るのですが、スピードが上がり、ディフェンスラインが崩れたところにラストパスでゴールに迫るのがバルサの攻撃の肝でした。

この時のバルサを止められるチームはおらず、史上最高のチームだと言われるほどになりました。

史上最高といわれるほどのチームなので当然対策を練られるわけですが、この当時のバルサへの対抗手段はこれといった対応方法はありませんでしたが、グアルディオラは慢心することなくさらなる進化を求めました。

細部へのこだわりを見せた11−12シーズン

盤石の体制で迎えた2011−12シーズンでしたが、グアルディオラはさらなる進化が必要だと考えていました。対戦相手にバルサの狙いどころを徹底的に研究されるようになったのです。

バルサの狙いどころは、バイタルエリア及び、裏のスペースです。しかし、10−11シーズンにメッシの0トップシステムで中盤を攻略されていましたので、この対応策では不十分だったのです。

ならばということで、スペースそのものを封じれば良いというのが、暫定の解でありました。スペースを全て封じることはできないので、スペースに入って来た瞬間に潰しにかかるというのが、策でした。

バルサのサッカーはスペースを使い、ギャップに入って敵陣を崩すサッカーなので、スペースがないのは痛手でした。

そこで、グアルディオラがとった策は、ディフェンスのライン上で受けさせることでした。ディフェンスのライン上ならば、スペースは関係ありませんし、よりフリーで受けることができます。

ディフェンスのライン上につきましては、

ギャップ4 ディフェンスのライン上で受ける

をご覧下さい。

パス交換において、スペースで受けるという概念に囚われず、ディフェンスのライン上でやりとりをしたことで、選択肢がスペースに比べ大きく広がりました。例えば、三角形の場合三角形の中にできるスペースは1つですが、ライン上、つまり辺は3つあるので、単純に選択肢が3倍になったというわけです。

攻撃側のバルサもどの辺上で受けるのかを見極めるのは少々骨の折れる作業ですが、ポジショニングの上手な彼らは難なくこなすことができました。

敵側は、3倍に増えた選択肢に対応することはできず、バルサのポゼッション率はどんどん上がり、支配率70%を超える試合は頻繁にありました。

また、スペースを捨てたわけではなく、ライン上で受ける事により、フリーならば、ドリブルでスペースに進入することができます。ライン上からスペースへ、スペースからライン上への切り替えが功を奏し、この当時のバルサ1強時代は健在でした。

このようなやり方が顕著に出たのが、リーガ第6節のVSアトレティコマドリードを5−0で破った試合でした。

バルサは3バックのシステムを取り、ボールポゼッションを高め、アトレティコにほとんどチャンスを与えずに勝利しました。アトレティコもスペースを与えないようにコンパクトに守備陣形をたもっていました。しかし、ディフェンスのライン上間でのパス交換をすると、スペースが空き、相手スペースにパスを出し、スピードアップを図るというように、バルサのやりたい放題の試合展開でした。

スペースだけではなく、辺という細部に拘ったことで、選択肢が増え、更なる進化を遂げた1戦だったと言えるでしょう。

3-7-0システム

2011年のクラブワールドカップでバルセロナはサントスと対戦しました。ネイマールやガンソ等の個の能力の高さを見せていたサントスと、組織力で圧倒的なポゼッションサッカーを魅せるバルセロナ、どちらが頂上決戦を制するのかと注目の一戦になりました。しかし、結果は4ー0とバルサが圧勝しました。何より得点以上にサッカーの内容に差が出ていました。サッカーはここまで進化したのかと言わんばかりのクオリティの高さを魅せてバルセロナは世界一のチームになりました。

この試合、バルセロナは3-7-0のフォーメーションを組み、フォワードのいないシステムを起用しました。ビジャがこの大会で怪我をしたのもありますが、普段バルセロナはウイングにペドロやサンチェスの様なフォワードの選手を起用しますが、この試合でウイングはアウベスとチアゴが担当しました。

中盤の選手をより多く起用した一戦は予想以上の成果がありました。敵のいない箇所でのワンタッチパスが増え、素早くボールを動かし、角度を変えることで、敵の狙いどころが全く定まらない状況を作り、あっという間に逆サイドに展開しゴールに迫り、得点をする。バルセロナは殆どサントスに仕事をさせること無く勝利を収めました。

この試合のポイントはダイレクトでできるところは出来るだけダイレクトでパスを出していたところだと思います。

後ろにボールを戻した時に本来ならば、トラップをする余裕もあり、再度組み立てというようにやり直しを図りますが、ワンタッチで角度を変えるパスを行うことで、敵にプレッシャーに行く時間すら与えないという印象でした。

一見遊びのパスで意味のないようなワンタッチのパス交換も相手にプレッシャーをかけさせないことで、リズムが生まれボールを奪うのは不可能な状態を作っていたのです。

そのために中盤の人数を増やしたのだと納得しました。バルサのサッカーはミッドフィルダーのサッカーとはよく言ったもので、この試合はその言葉を体現するような一戦でした。

CLチェルシー戦に見るサッカーの未来

このシーズンCLの優勝候補は圧倒的にバルセロナでした。しかしそのバルサを破ったのが、チェルシーでした。1stレグではチェルシーが1-0と先制したため2ndレグではバルサは2点差以上の勝利が勝ち抜けの条件となりました。

チェルシーの取った策は明白でゴール前に5-4のディフェンスラインを作り、ディフェンスの裏、バイタルエリアのスペースを全く与えないという策でした。前線にはドログバ1人を残してロングカウンターを狙うというものでした。

試合の展開は攻めるバルサ、守るチェルシーという構図が永遠と続きました。ブロックを組むチェルシーディフェンスにスペースは殆ど生まれない状況でしたが、この試合の面白いところはバルサが極限の狭いスペースを掻い潜りシュートまで持っていくというところでした。

引用:[https://www.youtube.com/watch?v=S9KXiuSt1Wo&t=180s]

掻い潜るためのポイントはワンツーです。ゴールにはなりませんでしたが、メッシとセスクでワンツーをし、シュートまで持っていきました。動画2分13秒〜

また、セスクからメッシへのワンツーがPKを得ることが出来ました。動画6分55秒〜

どちらもゴールにはなりませんでしたが、ガチガチに守るチェルシーディフェンスをバルサの哲学を持って崩した瞬間でした。

究極の技術と判断があれば、どんなに強固なディフェンスも崩すことができると思わせるような一戦でサッカーの未来が詰まっているような気がしました。ペップのサッカー哲学とこの当時のチームの選手があってこそのサッカーですので、どのチームも出来るわけではありませんが、今後技術を極めたチームがこのようなサッカーが出来ることを楽しみにしています。

今回はこの辺りにさせて頂きます。失礼致します。