ペップ・グアルディオラの戦術 11-12

どうも皆さんこんにちは。footballpossessです。

今回もペップバルサのポゼッションサッカーの戦術やっていこうかなと思います。

前回、2010-11シーズンのバルサの解説を致しました。ペップバルサのポゼッションはスピードアップを図るためのメリハリをつけるためだとご説明致しました。

メリハリの分岐になるのがバイタルエリアであり、バイタルエリアにスペースをつける為に中盤を崩すことに専念しました。中盤を崩したのち、スピードアップを図るのですが、スピードが上がり、ディフェンスラインが崩れたところにラストパスでゴールに迫るのがバルサの攻撃の肝でした。

この時のバルサを止められるチームはおらず、史上最高のチームだと言われるほどになりました。

史上最高といわれるほどのチームなので当然対策を練られるわけですが、この当時のバルサへの対抗手段はこれといった対応方法はありませんでしたが、グアルディオラは慢心することなくさらなる進化を求めました。

細部へのこだわりを見せた11−12シーズン

盤石の体制で迎えた2011−12シーズンでしたが、グアルディオラはさらなる進化が必要だと考えていました。対戦相手にバルサの狙いどころを徹底的に研究されるようになったのです。

バルサの狙いどころは、バイタルエリア及び、裏のスペースです。しかし、10−11シーズンにメッシの0トップシステムで中盤を攻略されていましたので、この対応策では不十分だったのです。

ならばということで、スペースそのものを封じれば良いというのが、暫定の解でありました。スペースを全て封じることはできないので、スペースに入って来た瞬間に潰しにかかるというのが、策でした。

バルサのサッカーはスペースを使い、ギャップに入って敵陣を崩すサッカーなので、スペースがないのは痛手でした。

そこで、グアルディオラがとった策は、ディフェンスのライン上で受けさせることでした。ディフェンスのライン上ならば、スペースは関係ありませんし、よりフリーで受けることができます。

ディフェンスのライン上につきましては、

ギャップ4 ディフェンスのライン上で受ける

をご覧下さい。

パス交換において、スペースで受けるという概念に囚われず、ディフェンスのライン上でやりとりをしたことで、選択肢がスペースに比べ大きく広がりました。例えば、三角形の場合三角形の中にできるスペースは1つですが、ライン上、つまり辺は3つあるので、単純に選択肢が3倍になったというわけです。

攻撃側のバルサもどの辺上で受けるのかを見極めるのは少々骨の折れる作業ですが、ポジショニングの上手な彼らは難なくこなすことができました。

敵側は、3倍に増えた選択肢に対応することはできず、バルサのポゼッション率はどんどん上がり、支配率70%を超える試合は頻繁にありました。

また、スペースを捨てたわけではなく、ライン上で受ける事により、フリーならば、ドリブルでスペースに進入することができます。ライン上からスペースへ、スペースからライン上への切り替えが功を奏し、この当時のバルサ1強時代は健在でした。

このようなやり方が顕著に出たのが、リーガ第6節のVSアトレティコマドリードを5−0で破った試合でした。

バルサは3バックのシステムを取り、ボールポゼッションを高め、アトレティコにほとんどチャンスを与えずに勝利しました。アトレティコもスペースを与えないようにコンパクトに守備陣形をたもっていました。しかし、ディフェンスのライン上間でのパス交換をすると、スペースが空き、相手スペースにパスを出し、スピードアップを図るというように、バルサのやりたい放題の試合展開でした。

スペースだけではなく、辺という細部に拘ったことで、選択肢が増え、更なる進化を遂げた1戦だったと言えるでしょう。

3-7-0システム

2011年のクラブワールドカップでバルセロナはサントスと対戦しました。ネイマールやガンソ等の個の能力の高さを見せていたサントスと、組織力で圧倒的なポゼッションサッカーを魅せるバルセロナ、どちらが頂上決戦を制するのかと注目の一戦になりました。しかし、結果は4ー0とバルサが圧勝しました。何より得点以上にサッカーの内容に差が出ていました。サッカーはここまで進化したのかと言わんばかりのクオリティの高さを魅せてバルセロナは世界一のチームになりました。

この試合、バルセロナは3-7-0のフォーメーションを組み、フォワードのいないシステムを起用しました。ビジャがこの大会で怪我をしたのもありますが、普段バルセロナはウイングにペドロやサンチェスの様なフォワードの選手を起用しますが、この試合でウイングはアウベスとチアゴが担当しました。

中盤の選手をより多く起用した一戦は予想以上の成果がありました。敵のいない箇所でのワンタッチパスが増え、素早くボールを動かし、角度を変えることで、敵の狙いどころが全く定まらない状況を作り、あっという間に逆サイドに展開しゴールに迫り、得点をする。バルセロナは殆どサントスに仕事をさせること無く勝利を収めました。

この試合のポイントはダイレクトでできるところは出来るだけダイレクトでパスを出していたところだと思います。

後ろにボールを戻した時に本来ならば、トラップをする余裕もあり、再度組み立てというようにやり直しを図りますが、ワンタッチで角度を変えるパスを行うことで、敵にプレッシャーに行く時間すら与えないという印象でした。

一見遊びのパスで意味のないようなワンタッチのパス交換も相手にプレッシャーをかけさせないことで、リズムが生まれボールを奪うのは不可能な状態を作っていたのです。

そのために中盤の人数を増やしたのだと納得しました。バルサのサッカーはミッドフィルダーのサッカーとはよく言ったもので、この試合はその言葉を体現するような一戦でした。

CLチェルシー戦に見るサッカーの未来

このシーズンCLの優勝候補は圧倒的にバルセロナでした。しかしそのバルサを破ったのが、チェルシーでした。1stレグではチェルシーが1-0と先制したため2ndレグではバルサは2点差以上の勝利が勝ち抜けの条件となりました。

チェルシーの取った策は明白でゴール前に5-4のディフェンスラインを作り、ディフェンスの裏、バイタルエリアのスペースを全く与えないという策でした。前線にはドログバ1人を残してロングカウンターを狙うというものでした。

試合の展開は攻めるバルサ、守るチェルシーという構図が永遠と続きました。ブロックを組むチェルシーディフェンスにスペースは殆ど生まれない状況でしたが、この試合の面白いところはバルサが極限の狭いスペースを掻い潜りシュートまで持っていくというところでした。

引用:[https://www.youtube.com/watch?v=S9KXiuSt1Wo&t=180s]

掻い潜るためのポイントはワンツーです。ゴールにはなりませんでしたが、メッシとセスクでワンツーをし、シュートまで持っていきました。動画2分13秒〜

また、セスクからメッシへのワンツーがPKを得ることが出来ました。動画6分55秒〜

どちらもゴールにはなりませんでしたが、ガチガチに守るチェルシーディフェンスをバルサの哲学を持って崩した瞬間でした。

究極の技術と判断があれば、どんなに強固なディフェンスも崩すことができると思わせるような一戦でサッカーの未来が詰まっているような気がしました。ペップのサッカー哲学とこの当時のチームの選手があってこそのサッカーですので、どのチームも出来るわけではありませんが、今後技術を極めたチームがこのようなサッカーが出来ることを楽しみにしています。

今回はこの辺りにさせて頂きます。失礼致します。

グアルディオラのバルセロナのポゼッションサッカー 10-11

どうも皆さんこんにちは。footballpossessです。

今回もペップ・グアルディオラのポゼッションサッカーについてやっていこうと思います。

前回のペップ・グアルディオラ就任時のポゼッションサッカーの続きになります。

ペップのポゼッションサッカーはギャップで受けることで、ゾーンディフェンスを無力化したというのが導入部分でした。あくまで、ゴールを奪うための過程でパスを回しているのであり、決してボール保持だけを目的としたパス回しを行なっているのではないというのが、前回にあらすじです。

ペップといえばボールポゼッションのイメージですが、以前ペップの言葉の中で、「ゴールを奪えないようなボールポゼッションならば私はカウンターを好む」みたいなことを言っていました。

あくまで試合を優位に進めるための手段の一つだということです。

ではペップのポゼッションにはどのような狙いがあったのでしょうか。相手の対策を踏まえて見ていきましょう。

ペップ就任時のバルサのパス回しはくどいようですが、ギャップに入ることだとご説明致しました。

ペップのバルサは2008-09シーズンには6冠を達成したチームですので、当然相手は対策を練ってきます。

どのような対策を取ってきたかというと、スペースを与えないようにディフェンスの陣形をコンパクトにすることでした。特に攻撃においての危険エリアであるバイタルエリアのスペースをコンパクトにすることで、前線の選手にフリーで前を向かせないよう陣形を整えるチームが増えました。

バルサにとってのバイタルエリアはスピードアップを図る場所でしたので、このエリアにスペースが無いのは、悩ましい問題でした。スピードに変化を加えなければ、ゴールを奪うのは難しいからです。裏に蹴るだけの攻撃では、単調になり、小柄な選手が多いバルサには不利でした。ペップバルサとしてはどうしても、スピードアップが出来るエリアが欲しかったのです。

メッシの0トップシステムの理由

上記の問題を解決するために、取った策はメッシの0トップシステムでした。ペップ就任時からメッシの0トップを使用している試合はありましたが、本格的に威力を発揮したのはこのシーズンでしょう。

ではなぜメッシの0トップシステムが解決に繋がったのか。

ペップの目的はバイタルエリアを広げるために、相手の中盤を釣り出そうと考えました。つまり中盤を制圧しようとしました。そのために必要なのが中盤で数的優位を作ることであり、メッシを中盤で起用した真の理由です。

数的優位さえ作れれば、バルサの中盤はボールロストをせずにパスを回せる技術がありますので、中盤を崩せると考えたのでしょう。また中盤であれば、デフェンスラインを崩すよりも比較的容易に崩すことができます。

事実その采配は大成功し、メッシ、イニエスタ、シャビでワンツーなどで中盤のデフェンスを剥がし、バイタルエリアに侵入します。

3人の内の誰ががバイタルエリアに侵入したら、他の2人の内の1人が全速力で前へ走り出し、もう1人が後ろからカバーを踏まえたパスコースを作りつつ、走り出します。

つまり中盤を突破した段階でスピードアップが可能な状態を作り出したわけです。スピードアップが可能であれば後は味方のデフェンスと中盤を中心にパスを回し無駄なボールロストを減らしていきます。そしてチャンスがあれば中盤で崩し、スピードアップを図るというわけです。スピードアップした後はウイングや上がって来た中盤の選手にラストパスを送り、ゴールに迫ります。

このボール回しの緩急の変化に相手は付いていくことが出来ず、バルサは次々にチャンスを作り出すことに成功しました。

さらにメッシがスピードに乗ってバイタルエリアに侵入した際はシュートやドリブル突破でデフェンスラインを崩すことも可能です。攻撃により迫力が増すというわけです。

しかし相手もさらに対策を練り、中盤の人数を増やした場合は、バルサは3-4-3の形を取ります。右サイドバックのダニエウアウベスをウイングの位置に張らせ、右のウイングにいた、ペドロまたはビジャが中盤からパスを受けやすくするように中に入ってきます。

システム上は3-4-3ですが、ボールポゼッション中は3-5-2のようなポジショニングです。

この方法ならば、仮にメッシ、イニエスタ、シャビにマンツーマンでマークにつかれても中盤は5対3で2枚も数的優位が疲れますので、スピードアップの弊害は無くなります。

もし相手のセンターバックがマンツーマンにつけば、ワイドに張っている、ダニエウアウベス 、ビジャ、ペドロの裏抜けの餌食になります。

このようにしてバルサは攻撃のスイッチの変化を作ったということです。

前線からのハイプレスによるショートカウンター

バルサのもう一つの攻撃パターンとして実はショートカウンターがありました。ペップバルサの攻撃パターンとしてはあまりイメージはないかもしれませんが、ショートカウンターからのシュートというパターンもしばしば散見されております。

それを可能にしているのが前線からのハイプレスです。相手がボールを持った際にパスコースを切りながら全速力でプレッシャーをかけます。パスコースが限定されるので、セカンドデフェンスは限定されたパスの出どころに向かって全速力ででプレッシャーに行きます。これをボールが奪えるまで続けます。

例え相手のボールホルダーがセンターバックだろうが、キーパーだろうが続けます。パスカットに成功したらショートカウンターというわけです。

ショートカウンターは相手の守備陣形が崩れた状態で攻撃できるので、スピードに乗りやすいため、ペップは取り入れております。当時、バルサよりボール保持の上手いチームはおりませんので、相手はたまらず、前線へクリアが精一杯でした。

バルサのデフェンスラインは数的優位を作り、余りのディフェンダーを作るのが鉄則です。つまりクリアされたボールにも全速力で対応することが可能というわけです。

しかし、6秒以上相手にボールを持たれた場合はプレスをやめます。なぜ6秒かというとこれは大体の目安で、相手がボールを奪ってから落ち着かせるには大体6秒くらいかかるからと言われているからです。

つまり、ボールが落ち着いてしまう前に回収しようというのがペップバルサのハイプレスのルールでした。6秒以上経ち、ボールが落ち着いたら、1度守備陣形を整え、ゾーンディフェンスにシフトチェンジします。しかし、大抵の相手はバルサのプレスを剥がすことが出来ずにボールを前に蹴って回収されていました。

唯一突破の兆しを見せていたのは、CLノックアウトラウンド1回戦のアーセナルだった気がします。彼らはパスでバルサのプレスをかわしていきましたが、それはバルサ側も同じことで、結局ボール保持の上手いバルサが次のステージに進むことになりました。

このようにしてバルサは素早くボールを回収しボール保持の時間を増やしていったわけです。

まとめ

ペップバルサのボールポゼッションは決してボール保持が目的ではなく、バイタルエリア以上のスペースでのスピードの変化が目的でした。

あくまで試合を優位に進める且つゴール奪うための下準備といったところでしょうか。

ポゼッション率が高ければ、相手のチャンスを奪っている可能性は高いですが、同時に自分たちのシュートチャンスを減らしている可能性もあります。

ペップのバルサが強かったのは緩いポゼッションのパスを見せられてからの素早いスピードアップに相手が対応できなかったからかもしれません。その攻撃のメリハリとルールが当時のバルサを支えたいような気がします。

今回はこの辺りにさせて頂きます。失礼致します。

ペップ・グアルディオラ就任時のポゼッションサッカー

どうも皆さんこんにちは。footballpossessです。

今回はペップ・グアルディオラのポゼッションサッカーについてやっていこうと思います。

グアルディオラと言えばバルセロナのポゼッションスタイルで大成功したのはご存知ですよね。

ポゼッションと聞くとボールを保持し、攻撃の時間を増やすことでチャンスを増やしゴールに迫る。そして、相手にボールを持たさないことで、失点のリスクを減少させるのが目的のスタイルだというのは何となくわかると思います。

クライフの時代から言われている「7割のボール支配ができれば、80%の試合に勝つことができる」という言葉を受け継ぎ、システムを進化させたのがグアルディオラのサッカーでした。

グアルディオラのバルサは、圧倒的なクオリティで世界中に衝撃を与え、圧倒的な強さを見せつけていました。いわば、バルサ1強時代の到来です。グアルディオラのバルサ就任前はロナウジーニョ、カカ、クリスティアーノ・ロナウドの様な個の力が重要視されていた時代だったので、チームでゴールを奪うサッカーが強さを発揮した時に、衝撃を受けた方は少なくないかと思います。メッシ、イニエスタ、シャビ、ペドロ、ビジャの様な小柄な選手が活躍できることを証明した。瞬間でもありましたので、尚更インパクトは強かったと思います。

ではなぜペップのバルサはなぜこんなに衝撃を与えたのでしょうか。いくつかの理由があると思いますので順を追ってご説明致します。

ボール保持の復活

クライフの時代から提唱されていたボール保持ですが、ドリームチーム以降ボール保持に拘るチームは殆どありませんでした。ファンハール就任後シャビ、プジョルのようなカンテラの選手を起用しましたが、ポゼッションスタイルの確立まではしていませんでした。

ライカールト就任後もロナウジーニョ、エトーという選手が主力として活躍しましたが、ボール保持がメインではありません。前線の選手にいかにフリーでプレーをさせるかが重要視されていました。事実この当時はスペースが広大にありましたので、クラックが活躍できる条件が揃っていました。つまり、前線の選手の能力こそが、得点に結びつくという時代だったのです。

しかし、どんな優秀な選手も複数人で取り囲み、ドリブル、パスを封じられるとボールロストをする場面が多々見られるようになりました。1人の天才を止めるためにゾーンディフェンス、ゾーンプレスが強化されていきました。つまり、前線の選手が自由にプレー出来る時間とスペースがなくなってきたのです。

バルサも当時ロナウジーニョに依存しておりましたので、頭を悩ませていました。そこで就任したのがグアルディオラでした。彼が就任したのちのバルサはチームプレーを重視し、ポゼッションサッカーの復権に努めました。ご存知の通り。大成功を収めましたが、なぜ成功をおさめられたのでしょうか。

ゾーンディフェンスを崩壊させたギャップでの受け方

上記で述べたようにゾーンディフェンスが、強化されたことで、前線の選手に時間とスペースが与えられなくなり、チームプレーに乏しい選手は淘汰されています。

そもそもゾーンディフェンスとは何かというと、自分の担当エリアを振り分け、陣形をなるべく崩さないよう無駄な動きを減らし、ゴールを守ります。1人が抜かれても次、次と対応出来る部分が強みであります。

さらにサッキのゾーンプレスを組み入れることにより、ボールを中心としたプレスと陣形の整備を行うことで時間とスペースを奪っていくのがペップ就任時のディフェンスのトレンドでした。

しかし、ゾーンディフェンスの弱点を突き、完全に無効化したのがペップのポゼッションサッカーです。

ゾーンディフェンスの弱点とは何か、それはギャップです。

ギャップにつきましてはギャップ1 ギャップで受ける理由ギャップ2 三角形の外心で受けるギャップ3 等間隔で距離を取った位置ギャップ4 ディフェンスのライン上で受ける、をご覧下さい。

ゾーンディフェンスはマンマークとは違い最も近いディフェンダーがアタッカーに対してのアクションを行い、対応します。ですが最も近いディフェンダーを決定させられないギャップへの対応は決まり事がない限り、対応に遅れが出てしまします。

そこで、バルサの選手はギャップに陣取ることでディフェンスの役割を曖昧にさせました。誰がプレスに行くのか、誰がカバーに行くのかが曖昧になったのです。そんなチグハグなディフェンスだとバルサの選手はやりたい放題でした。特にシャビ、イニエスタ、メッシは狭いスペースでもプレーのできる選手なので、僅かな隙も見逃しませんでした。

チーム全員がギャップに陣取ることで常に誰かがフリーの状況を作りその選手にパスがわかることで、相手ディフェンスを後手に追い込むことに成功しました。

出典:http://footballtactics.net/appnew/

さらに、ペップ就任時の守備はFWがセンターバックにプレッシャーをかけるチームが多かったため、ディフェンスの間隔が間延びしているチームが多かったため、広いギャップが生まれやすかったのです。

出典:http://footballtactics.net/appnew/

バルサにとってギャップが広いのは追い風で、次次にギャップに入る事によって、パスコースを作り、ディフェンダーのプレッシャーをいなしておりました。パスを繋ぐのにストレスはなかったでしょう。もし、スペースが狭くなり複数人で奪いに来た場合はダイレクトやワンツーで角度を変え、逃げ場を作りながら新しい広大なスペースに展開する術をバルサの選手は持っていましたのでパス回しでのボールロストはほとんど見られませんでした。

2008−09シーズンのバルサがレアルを6−2で下した試合は特にこの様な場面が見られました。

このシーズンのバルサはボールポゼッションを意識しているというよりかは、相手のプレッシャーをパスでいなしていき、フリーなスペースでボールを受け相手ゴールに迫っていくというスタイルでした。ギャップで受け前を向く機会が多かったので、結果的にボールポゼッションが上がっていったのです。決してボールポゼッションがメインではないという事です。あくまでゴールを奪うための過程でしかなかったという事です。

長くなりそうなので、今回はこの辺りにさせて頂きます。それでは失礼致します。

バルセロナ戦術の歴史 クライフのドリームチーム攻撃編

どうも皆さんこんにちは。footaballpossessです。

今回はバルセロナの戦術の歴史。クライフの率いたドリームチームの攻撃編やっていきたいなと思います。

前回のバルセロナが4−3−3のフォーメーションを使う理由 クライフの守備基盤

の続きになりますので、まだご覧になっていない方は是非先にご覧下さい。

クライフバルサは守備においてウイングが相手ディフェンス4枚を釘付けにし、中盤より後ろで数的優位を作ります。ビルドアップ時、相手センターバックの選択肢を闇雲なロングボールに絞ることで、迅速なボール回収を図ることは前回の記事でご説明致しました。

今回はボールを回収した後にどの様に攻撃に繋げるのかをバルサのフォーメーションろ合わせて解説していこうと思います。

クライフはボール保持にこだわる

「試合中に7割ボールを保持できれば、8割の確率で試合に勝つことができる。」これはバルサに伝わるある意味格言とも言える言葉です。

ボールを長く支配することで、試合を支配することができる。自分達はより多くの攻撃をしより多くのチャンスを作る。反対に相手はボールを保持することが出来ずに少ないチャンスしか与えられない。こちらはボールを動かすのに対し、相手は身体を動かさなければならないし、守備の時間が多ければ精神的にストレスを感じる。

これがバルサに伝わるフィロソフィーであります。

元々はアヤックスが採用していた、トータルフットボールが源流ですが、クライフはそれを言語化し、システムとしてチームに落とし込んだ人物だと言えます。

クライフはその哲学を貫いてドリームチームと言われるチームを作り上げましたが、どの様なやり方があったのでしょうか。

それを読み解くには、バルサのフォーメーションに付随しております。

基本フォーメーションは4−3−3

バルサの基本フォーメーションは4−3−3です。基本的には数的優位によりロングボールを蹴らせてボールを回収し、前線の3トップにボールを繋げるまでが第1段回です。

ドリームチームのバルサの前線はタレント揃いでした。ロマーリオ、ラウドルップ、ストイチコフ、バケーロの様な選手が前線に配置され、仕掛けの起点となっていました。

この様な技術のある選手が中央、またはサイドからドリブルで仕掛ける事により、相手のディフェンスラインを崩し、得点のチャンスを伺うというのが当時のバルサの戦術でした。

そこで、クライフが考えたのがどの様にして彼らにフリーでボールを持たせるのかです。彼らの才能をフルで発揮させるためにも、継続的なボール保持が必要でした。

つまり、クライフが4-3-3を採用したのはボール保持を行うためでありました。

当時、主流であった4-4-2を使用しなかったのは以下の理由になります。

結論から言うとワンタッチ、ツータッチで前線にボールを運ぶに当たって4-4-2は不向きだったのです。

4-4-2は横並びに3つのラインが出来ますが、センターバックからフォワードにパスを通すのに中盤を介すと2本の縦パスが必要になります。

確かに前線までのパス本数は少なく済むかもしれませんが、少ないが故に相手に読まれやすい且つ、プレッシャーを受けやすいデメリットがあります。

縦パスにつきましては角度2 縦でボールを受ける

をご覧下さい。

クライフの戦術は前線の選手ににフリーでボールを送ることですので、プレッシャーが厳しい状況は不本意です。

では中盤にボールが繋がったら横パスをすればいいのではないかと思いますが、横パスは、視野が狭くなり、ワンタッチ、ツータッチでボールを逆サイドに展開するのは困難です。

これもクライフの少ないタッチでのボール保持の考えに沿わないやり方です。

そこで、効果的な方法が4-3-3でした。

4-3-3であれば三角形を多く形成され、斜めのパスの本数が増えます。

斜めであれば、視野の確保が比較的容易になりますので、ワンタッチ、ツータッチのパスも増え、前線の選手もフリーで受けられる数が増えると言う考えです。

仮に、相手のプレッシャーが厳しい状況でもワンタッチ、ツータッチならばボールを速く動かせますので、プレッシャーを回避し、やり直すことができます。

斜めパスにつきましては

角度5 斜めで受けて三角形を作ろう

角度(段差)を付けた三角形を形成しパスを回す

をご覧下さい。

人が動くよりもボールが走る方が早いという、物理的な法則を利用したのでしょう。

3-4-3の併用

守備時に中盤より後ろで数的優位を作るのが、クライフバルサのやり方ですが、裏を返せば攻撃時は数的不利になります。

攻撃でも数的優位を作りたいクライフにとって、悩ましい問題ですが、攻撃時に3-4-3を採用することで、解決に努めました。

クライフは攻撃に積極的に参加出来ない、センターバックを攻撃の起点にするために1枚アンカーの位置に上げます。

当時はリベロと呼ばれていましたが、この位置に抜擢されたのが、現役時代のペップ・グアルディオラでした。大柄な選手ではありませんでしたが、戦術眼と技術に優れた彼をパスの起点にしました。

グアルディオラが中盤に上がり、長短のパスを織り混ぜることで、中盤での数的優位が作れ、前線の選手がより楽な状況でプレーをすることが出来るようになりました。

前線のスター選手を陰から支えていたのが、グアルディオラだったというわけです。彼の功労もあり、クライフのバルサはチーム初となるチャンピオンズカップ(現在のチャンピオンズリーグ)を制し、ドリームチームと呼ばれるようになったわけです。

まとめ

クライフのバルサが守備、攻撃のメカニズムを作ったため、ポゼッションサッカーという言葉が現在まで深く浸透したと言えます。

クライフ政権から15年ほどの月日が経ってペップ政権に変わったときは歴史上最強のチームと呼ばれるようにもなりました。

バルサを語る上では欠かせないのが、クライフの基盤だったと言えると思います。

2020年現在ではバルサは思うようなプレーができてはおりませんが、再度輝く姿を見たいですね。

今回はこの辺りにさせて頂きます。失礼いたします。

バルセロナが4−3−3のフォーメーションを使う理由 クライフの守備基盤

どうも皆さんこんにちは。footballpossessです。

今回はバルセロナが4−3−3(アンカーを入れる)を使う理由についてやっていこうと思います。

サッカーのフォーメーションってたくさんあるかと思います。

4−4−2、4−2−2−2、4−2−3−1、4-1-4-1、3-4-3、3-1-2-1-3、5-4-1、5-3-2など数えたらいくつあるのかは正直わかりません。

さらに攻撃重視なのか、守備重視なのか、バランス重視なのかなど戦術によって各選手の役割も大きく変わってくるかと思います。

その中でバルセロナというチームは4-3-3というフォーメーションを長年使用してきました。

数あるフォーメーションがある中でなぜ4−3−3をベースとして使用しているのでしょうか。

まずバルセロナの戦術はヨハン・クライフの考え方に大きく影響を受けているのは皆さん承知でしょう。クライフイズムを継承していると言っても良いでしょう。

ヨハン・クライフは選手として1973年~1978年にバルセロナに在籍しておりました。選手としてはドリブル突破を試みるシーンがよく散見されました。

さらに監督として1988−89シーズンから1995−96シーズンを率いました。エル・ドリームチームと言われるまでのチームを作り上げ、クラブ初のチャンピオンズカップ(現チャンピオンズリーグ)を制覇する偉業を達成致しました。

サッカーをやっていてクライフの名前を知らない人は少ないと思いますが、人物としてはどのような人なのでしょうか。

クライフの残した言葉を見ていきましょう。

引用:[https://www.goal.com/jp/news/4115/コラムインタビュー/2016/03/25/21677682/コラムヨハンクライフ-すべての始まり]

2016年(68歳)で逝去されたヨハン・クライフ

引用:[https://www.soccer-king.jp/news/world/ned/20160328/425774.html]

「選手はあらゆるポジションでプレーできるべきだと、私は考えている。だからこそ、全選手が戦術に関する説明をくまなく聞くことが重要だ。たとえ左ウィンガーであっても右サイドバックの話だからといって寝ていてはならない」

「結果が伴わないクオリティは無意味だ。しかし、クオリティが伴わない結果は退屈だ」

「私は1-0よりも5-4で勝つことを望む」

「フットボールは常に魅力的かつ攻撃的にプレーし、スペクタクルでなければならない」

「ゴールを決めるためには、シュートを打たなければならない」

「ボールを持て。ボールは1つしかない。常にボールを持てば、ディフェンスをする必要はない」

「ボールを持っているならば、できる限りピッチを広げなければならない。一方、ボールを持っていないならば、できる限りピッチを狭めなければならない」

「自分が走る必要はない。ボールを走らせろ」

「ボールを扱う時、ワンタッチでプレーできれば素晴らしい。ツータッチもまずまずだ。しかし、スリータッチでは駄目だ」

「スピードはしばし判断力と混同されている。私は他の選手よりも早く走り始めるので、速く見える」

「的確なポジショニングを、的確なタイミングで取らなければならない。早くても遅くても駄目だ」

「私のチームでは、ゴールキーパーがファースト・アタッカーで、ストライカーがファースト・ディフェンダーだ」

上記の言葉から垣間見えるように、クライフは、サッカーにおいてボールを保持する攻撃を重要視しています。

その考え方は現在のバルセロナまで浸透していますが、特に印象が深かったのが、ジョゼップグアルディオラが率いていたシーズンではないでしょうか。ペップのサッカーは常に最先端を走っていましたが、クライフが生み出したサッカーが基盤となっており、あのような美しいサッカーに進化したのです。

では、ボールを保持するためにクライフの作った基盤とは一体どの様なものなのでしょうか。見ていきましょう。

ウイングが戦術の鍵

クライフの考えは、「攻撃の範囲は広く、守備の範囲は狭くプレーしなければならない」という考えです。

ピッチ全体を使った攻撃は、ボールを奪われづらく、縮小されたピッチではボールを奪いやすいという考えなのだろう。

その考えを戦術に組み込んだときに、必要となるのがウイングの存在でした。

攻撃時にはタッチラインの線を踏むくらいにワイドに開きボールを受けることで、相手の可動域を広くします。攻撃についてのイメージはしやすいかと思います。

しかし、クライフの戦術のウィングの使用は守備にこそ効果を発揮しておりました。

数的優位を作るためのウィング

さてここからが、クライフが4ー3ー3を使用していた理由に繋がります。

相手にボールを持たせないためにもプレッシングを行うのがクライフの考えです。

ですが過度なプレッシングは失点に繋がりかねません。

そこでクライフの取った策がウイングの存在です。

ビルドアップはセンターバックから始まります。

現在のサッカーでは、プレッシングを行う際、センターバックへ猛プレスをかけるチームも見かけますが、クライフは違いました。

センターバックからのファーストパスを出させないようにするのがクライフの考え方です。

まずはセンターフォワードが相手ボランチまたは、アンカーの位置まで引いてきます。

相手のボランチは通常2.3人ですので、バルサの中盤3人+センターフォワード1人で対応することができます。

次にウイングの役割ですが、基本的なマークはサイドバックになります。相手のビルドアップ時のセンターバックがボールを持っている時はセンターバックとサイドバックの間に陣取りパスコースを封じます。

相手のセンターバックは中盤にパスが出せない、サイドバックにもパスが出せないという状況が生まれますので、センターバック同士のパス交換か前線へのロングパス、ドリブルで持ち上がるぐらいしか選択肢がありません。

それがクライフバルサの狙いです。

当時のセンターバックは現在ほどの技術を持ち合わせている選手が少ないため、ドリブルで持ち上がるのは非常にリスキーです。パス交換も危い部分があります。

前線へのロングパスが、ファーストチョイスになることが多いのですが、バルサ側は中盤のエリアとディフェンスエリアの人数を合わせて8人に対し、相手は中盤と前線の人数を合わせて6人で戦わなければならない状況になります。

バルサはこの数的優位を利用してボールを素早く回収します。

ウイング2枚が相手ディフェンス4枚を抑えることでこの数的優位の状況を生み出したというわけです。

アンカーの役割

クライフの戦術でもう一つ鍵になるのがアンカーの存在です。

アンカーは守備時において数的優位を生み出すキープレイヤーとなっております。

数的優位を生み出すために相手のフォワードの人数で守備位置を変更させる仕事がアンカーの役目です。ウイングが作り出した数的優位の状況を生かす働きをしなければなりません。

相手フォワードが1人の場合は、味方のセンターバックが2枚おり、カバー状況が作れているので、アンカーは中盤で1人余りカバーに徹する仕事をします。つまり、中盤で数的優位を作る働きをするということです。ツートップで1枚中盤に降りてくる状況も考えられるので同様の対応をします。

相手フォワードが2人の場合は、センターバックが2人では数的優位は作れません。そこでアンカーが相手フォワードの1枚を見ます。アンカーがフォワードの対応をすれば、ディフェンスは1枚余ることが出来ますので、数的優位を作ることが出来ました。

相手がツートップの場合中盤の人数が減るので、アンカーがいなくとも数的優位が作れますので、中盤の対応も問題ありません。

この様に相手の前線の数に応じてアンカーの位置をずらして行くのが、クライフバルサの特徴の一つでした。

まとめ

クライフバルサは適切なボール回収のために中盤とディフェンスラインの数的優位を作り出すために、ウイングとアンカーに重要な役割を任せております。相手のセンターバックがボールを持った際にロングボールを蹴らせる様な仕組みを作り、ボール回収しやすい状況を生み出しております。

そのためにウイングとアンカーが存在する4−3−3を採用していたのだと思われます。

ボール保持を行うために守備の基盤を作る。そればクライフの戦術の第1歩目だとも言えるでしょう。

尚、この詳細は「バルセロナ戦術アナライズ」西部謙司 著書に記載されたものです。ご興味があればご覧になってみて下さい。

今回はこの辺りにさせて頂きます。失礼致します。