トラップ理論

どうもこんにちはfootballpossessです。

今回はトラップやっていこうかなと思います。

突然ですが皆さんはサッカーにおいてなぜトラップをするのかと考えたことはありますか?普段サッカーをしている時にパスが来たら何気なくトラップをして次のプレーをしようとしている人は多いのではないでしょうか。

パスが来て、トラップし、ドリブルやパス、シュートをし、動き直します。個人のタスクとしては次に繋げたということで、一先ず合格点でしょう。

ですが少し考えてみて下さい下さい。この過程の中でトラップって本当に必要でしょうか。トラップをする事によって、その人自身は丁寧にタスクをこなしやすくなったかもしれませんが、次のパスを受けた人はどうでしょうか。また、ディフェンスのプレスはどうでしょうか。パスのリズムはどうなったでしょうか。

全体を俯瞰して見た場合、自分がトラップをしたことによって相手ディフェンスは次のパスコースが読みやすくなりプレスに行きやすくなりまってしまいます。また、パスのリズムや流れを止めてしまうデメリットがあるかいうところから、改めて考えて欲しいと思います。

極端な話ダイレクトで全てが出来るならば、トラップなんて必要無いわけです。何故ならダイレクトの方がリズムが早くディフェンスも対応しづらい訳ですから。

「いや、トラップしてからの方が確実に出来るメリットがありますよ」って言う意見がもしかしたらあるかもしれませんが、そんなの技術不足の言い訳でしかありません。周りを素早く見て、ダイレクトで出来る体勢を取り、ダイレクトでパスを出す練習をすれば良いだけの話です。

つまり何が言いたいのかと申しますと、トラップが必要な状況とタイミングで初めてトラップを使用するという選択になるということ。さらに細かく補足すると、トラップを学ぶためにはその状況とタイミングで必要になるトラップの方法を学びましょうということです。

技術一つとっても何のためにその技術が必要なのか、その技術は試合でどう生かされるのかを考えながら練習をしなければ試合で通用しないと言うことです。

前書きが長くなってしまいましたので本題に入りますが、それではどんな時にトラップが必要になるのでしょうか。それは

  • ターンをしたい時
  • どうしてもダイレクトでパスができない場合(パスが来たタイミングで近くに味方がいない)
  • 味方の動き直しのためにあえて、リズムをとめたい時(タメを作りたいとき)
  • ロングボールを受けた時(蹴りたい時も)
  • ゆっくりとゲームメイクしたい時
  • 相手を釣り出したい時
  • トラップで相手を振り切りたい時

この辺りがトラップが必要になる時ではないでしょうか。トラップを習得するにあたってこれらの状況に合わせた練習が必要になるということです。

私の意見ではこれらを見る上で、次にボールを蹴るためのトラップというのは非合理的と言えます。ボールを蹴るためにトラップを自分の少し前に出したりしますが、その間にボールを奪われるリスクを増やしてしまうだけです。

トラップはボールを落ち着かせるためにまずは自分の懐に収めましょう。懐に収めたのちに次のプレーに移れば良いのです。

トラップの方法につきましては別の回でやろうかなと思います。

長くなりそうなので今回はこの辺りにしようと思います。失礼致します。

強い!速い!読まれない!インサイドキックが格段に上達する方法

どうも皆さんこんにちは。footballpossessです。

今回はインサイドキックやっていこうと思います。

インサイドキックについては色々な意見が散見されると思います。指導者によって教え方がそれぞれで、ネットや動画サイトでも様々な意見が飛び交っており、困惑されている方も多いと思います。

それぞれ理念があり、工夫がありと各々やりやすいやり方があると思いますので私は一概にどれが正しいとは申しませんが、インサイドキックを学ぶ上で一度立ち返って考えて頂きたいことがあります。

それは、『そのインサイドパスは試合をする上で弊害になっていませんか?』ってことです。

「弊害って何?」って思うかもしれませんので、ご説明しますと

  • 次に動き直すに動きずらくないか
  • 相手に読まれることなくパスを出せているのか
  • リターンを受けても対応できるのか
  • 試合のリズムを崩していないか

などが上げられるかと思います。

サッカーは相手がいるスポーツです。相手を欺かなければなりませんし、相手より速く質の良い動きをしなければなりません。決して綺麗な球筋を競うスポーツではありません。

正直に申しますと、上記の事象が満たせていればパスを出すに当たって、別にインサイドキックではなくても良いということです。速くて、相手に読まれなくて、ゲームメイクができるのならば、ボールを蹴る場所はつま先だろうが、かかとだろうが、何だって良いということです。

バスケットボールの試合を見たことがある人は少し思い出して頂きたいのですが(見たことがない人は一度ご覧になっても良いかもしれません)、パス回しをする際に次のパスをする方に向いて「よしパスを出しますよ」と言わんばかりに丁寧に出している人はいるでしょうか?

まずいないと思います。何でいないかというと、パスコースが読まれプレッシャーがかかってしまうのを防いだり、相手の予想を外す事によってゴールへ直結させたりするからです。特にバスケの場合はボールを蹴るではなく、投げる、放るの行為になりますので、パススピードや距離はサッカーに比べ劣ります。また、人数も少なく、コートも狭いのでパスカットは失点へ直結しやすいので、よりシビアに工夫してパスを回さなければならないわけです。

バスケットボールで例を出しましたが、これはサッカーも同じで、パスを出す際に一つ一つ相手を意識して出さなければならないという事です。はっきり申しますと相手に読まれるご丁寧なキックは相手がいるスポーツにとっては足手まといでしかないという事です。

このように、インサイドキックを学ぶ上では試合で活用できるインサイドキックを学ぶ必要があるという事です。

ではインサイドキックを学ぶ必要はないんじゃないかと感じる方もいるかと思いますが、強くて速いパスを出すに当たってインサイドキックが一番有効だから我々はインサイドキックを使うのです。

つまり、

  • 次に動き直すに動きずらくないか
  • 相手に読まれることなくパスを出せているのか
  • リターンを受けても対応できるのか
  • 試合のリズムを崩していないか

を満たすインサイドキックを学ばなければならないという事です。

そんな蹴り方あるのと思われるかと思いますが、これがあるのです。

蹴球計画さんが記載している正しいインサイドキックの表裏という記事があります。こちらに詳しく書かれているので是非ご覧下さい。

 http://c60.blog.shinobi.jp/Category/18/ 

どのような内容かと簡単に要約すると、身体の遠心力を使い、足を回すように蹴る事で、次に動き直しやすくなり、相手に読まれづらくなるというものです。

上の画像をご覧下さい。

わかりますでしょうか。軸足を中心に蹴り足を回すようにしてボールを捉えていおります。

このようなキックをする事で、蹴った足でそのまま着地し次の一歩目の軸足になり、走り出すことができます。

パター型といわれる、足の面を並行にした蹴り方だと、蹴った足が着地するときは、横を向いてしまいますので、次の一歩に繋がらないデメリットがあります。

しかし、このような蹴球計画さんの言葉を借りるならば表のインサイドキックは蹴った足が着地するときの向きは前を向いていますので、次の一歩に比較的速く進むことが出来るメリットがあるということです。

ポイントはボールを押し出すのではなく、遠心力を使って当てるということです。少し感覚的にお話しすると、ボールを蹴るのにエネルギーを使わないという言い方をさせて頂きます。自然な身体の動きに身を任せてボールを当てに行くという感覚で蹴れると、身体の力が抜け、綺麗なパスが蹴れるようになります。

この蹴り方のもう一つの特徴は、身体の内側にボールが進んでいくという事です。相手ディフェンスと正対している時にこのキックをすると、相手のディフェンスはボールが正面に飛んで来るものだと思っていたのが、飛んでこないため、パスカットがしづらいという事です。普段何気なく使っているインサイドキック一つで相手を欺くことができます。

また、パスの受け手の視点で考えると、ディフェンスが予想していない場所にボールが飛んできるので、次のプレーがしやすい状況が出来ているという点もメリットの一つになります。

次のプレーを意識したキックにこれほど適した蹴り方はないと思われます。当時スペイン全盛期のレギュラー陣はみんなこの蹴り方をしていますのであれほど流麗にパスを繋ぐことができたのです。

補足

さてここからは私のオリジナルの部分になるのですが、インサイドキックをするに当たってのコツをお伝えできればと思います。

ボールを当てる場所

インサイドキックを伝えるに当たっていろいろな意見があるかと思いますが、私が思うに最も適した箇所をお伝えします。

参考:https://www.sapporo-sports-clinic.jp/disease/296/

外脛骨と呼ばれる部分にボールを当てます。ここはインサイドで一番硬い場所になりますので、少しの力でボールが飛んでいきます。ボールに当てるだけの意識で飛んでいきます。身体に余計な力を入れずに蹴ることができますので、動き直しをするに当たって非常に適した場所になります。

引用:https://www.yoshino-seikei.jp/ostibialeext..html

場所でいうと矢印の部分になるのですが、くるぶしの下から少し足の指の方に進んだ場所になります。自分の足を触りながら確かめてみてください。少し出っ張った箇所があると思いますのですぐにわかるかと思います。(人によって出っ張り方が違うらしい)(ちなみにここが出っ張りすぎている人は捻挫しやすいそうです。僕は出っ張りすぎています。泣)

この場所に当てるために意識したいポイントは蹴る足の指をあげることです。指をあげることで、インパクト時に外脛骨の部分に力が集中しますので、より強くて速い球が蹴れるようになります。

ポイント

  • 外脛骨にボールを当てる(一番硬い場所なので蹴るのに力を使わなくて済む)
  • 蹴る足の指をあげる意識(インパクト時に外脛骨の部分に力が集中する)

軸足の膝の使い方

もう一つ私がお伝えしたいのが、軸足の膝の使い方です。

結論から言うと、ボールが蹴り足に当たる前に、軸足側の膝を少し落とすことです。膝が落ちるエネルギーをボールに伝えることで、ボールにより強いエネルギを伝えることができます。

ただ、膝を落とすのはほんの少しで大丈夫です。どれくらいかと言うと、軸足を踏み込むときに軽く身体が沈むかと思いますのですのくらいの沈みで大丈夫です。もっと力を伝えたい人は深く沈めば良いのですが、やりすぎると、次の1歩への弊害になってしますので、私は軽く沈む程度を推奨します。

このように当てる場所と膝の力、身体の遠心力を使うことで、私はインサイドキックをするに当たってほとんど力を使っていません。もはや蹴っていないくらいの感覚で強いボールが蹴れます。インサイドキックに悩んでいる方、改善を試みたい方、新しく学びたい方は是非やって見て下さい。必ず試合に役立つ良いキックになりますよ。

今回はこの辺りにさせて頂きます。それでは失礼致します。

ペップ・グアルディオラの戦術 11-12

どうも皆さんこんにちは。footballpossessです。

今回もペップバルサのポゼッションサッカーの戦術やっていこうかなと思います。

前回、2010-11シーズンのバルサの解説を致しました。ペップバルサのポゼッションはスピードアップを図るためのメリハリをつけるためだとご説明致しました。

メリハリの分岐になるのがバイタルエリアであり、バイタルエリアにスペースをつける為に中盤を崩すことに専念しました。中盤を崩したのち、スピードアップを図るのですが、スピードが上がり、ディフェンスラインが崩れたところにラストパスでゴールに迫るのがバルサの攻撃の肝でした。

この時のバルサを止められるチームはおらず、史上最高のチームだと言われるほどになりました。

史上最高といわれるほどのチームなので当然対策を練られるわけですが、この当時のバルサへの対抗手段はこれといった対応方法はありませんでしたが、グアルディオラは慢心することなくさらなる進化を求めました。

細部へのこだわりを見せた11−12シーズン

盤石の体制で迎えた2011−12シーズンでしたが、グアルディオラはさらなる進化が必要だと考えていました。対戦相手にバルサの狙いどころを徹底的に研究されるようになったのです。

バルサの狙いどころは、バイタルエリア及び、裏のスペースです。しかし、10−11シーズンにメッシの0トップシステムで中盤を攻略されていましたので、この対応策では不十分だったのです。

ならばということで、スペースそのものを封じれば良いというのが、暫定の解でありました。スペースを全て封じることはできないので、スペースに入って来た瞬間に潰しにかかるというのが、策でした。

バルサのサッカーはスペースを使い、ギャップに入って敵陣を崩すサッカーなので、スペースがないのは痛手でした。

そこで、グアルディオラがとった策は、ディフェンスのライン上で受けさせることでした。ディフェンスのライン上ならば、スペースは関係ありませんし、よりフリーで受けることができます。

ディフェンスのライン上につきましては、

ギャップ4 ディフェンスのライン上で受ける

をご覧下さい。

パス交換において、スペースで受けるという概念に囚われず、ディフェンスのライン上でやりとりをしたことで、選択肢がスペースに比べ大きく広がりました。例えば、三角形の場合三角形の中にできるスペースは1つですが、ライン上、つまり辺は3つあるので、単純に選択肢が3倍になったというわけです。

攻撃側のバルサもどの辺上で受けるのかを見極めるのは少々骨の折れる作業ですが、ポジショニングの上手な彼らは難なくこなすことができました。

敵側は、3倍に増えた選択肢に対応することはできず、バルサのポゼッション率はどんどん上がり、支配率70%を超える試合は頻繁にありました。

また、スペースを捨てたわけではなく、ライン上で受ける事により、フリーならば、ドリブルでスペースに進入することができます。ライン上からスペースへ、スペースからライン上への切り替えが功を奏し、この当時のバルサ1強時代は健在でした。

このようなやり方が顕著に出たのが、リーガ第6節のVSアトレティコマドリードを5−0で破った試合でした。

バルサは3バックのシステムを取り、ボールポゼッションを高め、アトレティコにほとんどチャンスを与えずに勝利しました。アトレティコもスペースを与えないようにコンパクトに守備陣形をたもっていました。しかし、ディフェンスのライン上間でのパス交換をすると、スペースが空き、相手スペースにパスを出し、スピードアップを図るというように、バルサのやりたい放題の試合展開でした。

スペースだけではなく、辺という細部に拘ったことで、選択肢が増え、更なる進化を遂げた1戦だったと言えるでしょう。

3-7-0システム

2011年のクラブワールドカップでバルセロナはサントスと対戦しました。ネイマールやガンソ等の個の能力の高さを見せていたサントスと、組織力で圧倒的なポゼッションサッカーを魅せるバルセロナ、どちらが頂上決戦を制するのかと注目の一戦になりました。しかし、結果は4ー0とバルサが圧勝しました。何より得点以上にサッカーの内容に差が出ていました。サッカーはここまで進化したのかと言わんばかりのクオリティの高さを魅せてバルセロナは世界一のチームになりました。

この試合、バルセロナは3-7-0のフォーメーションを組み、フォワードのいないシステムを起用しました。ビジャがこの大会で怪我をしたのもありますが、普段バルセロナはウイングにペドロやサンチェスの様なフォワードの選手を起用しますが、この試合でウイングはアウベスとチアゴが担当しました。

中盤の選手をより多く起用した一戦は予想以上の成果がありました。敵のいない箇所でのワンタッチパスが増え、素早くボールを動かし、角度を変えることで、敵の狙いどころが全く定まらない状況を作り、あっという間に逆サイドに展開しゴールに迫り、得点をする。バルセロナは殆どサントスに仕事をさせること無く勝利を収めました。

この試合のポイントはダイレクトでできるところは出来るだけダイレクトでパスを出していたところだと思います。

後ろにボールを戻した時に本来ならば、トラップをする余裕もあり、再度組み立てというようにやり直しを図りますが、ワンタッチで角度を変えるパスを行うことで、敵にプレッシャーに行く時間すら与えないという印象でした。

一見遊びのパスで意味のないようなワンタッチのパス交換も相手にプレッシャーをかけさせないことで、リズムが生まれボールを奪うのは不可能な状態を作っていたのです。

そのために中盤の人数を増やしたのだと納得しました。バルサのサッカーはミッドフィルダーのサッカーとはよく言ったもので、この試合はその言葉を体現するような一戦でした。

CLチェルシー戦に見るサッカーの未来

このシーズンCLの優勝候補は圧倒的にバルセロナでした。しかしそのバルサを破ったのが、チェルシーでした。1stレグではチェルシーが1-0と先制したため2ndレグではバルサは2点差以上の勝利が勝ち抜けの条件となりました。

チェルシーの取った策は明白でゴール前に5-4のディフェンスラインを作り、ディフェンスの裏、バイタルエリアのスペースを全く与えないという策でした。前線にはドログバ1人を残してロングカウンターを狙うというものでした。

試合の展開は攻めるバルサ、守るチェルシーという構図が永遠と続きました。ブロックを組むチェルシーディフェンスにスペースは殆ど生まれない状況でしたが、この試合の面白いところはバルサが極限の狭いスペースを掻い潜りシュートまで持っていくというところでした。

引用:[https://www.youtube.com/watch?v=S9KXiuSt1Wo&t=180s]

掻い潜るためのポイントはワンツーです。ゴールにはなりませんでしたが、メッシとセスクでワンツーをし、シュートまで持っていきました。動画2分13秒〜

また、セスクからメッシへのワンツーがPKを得ることが出来ました。動画6分55秒〜

どちらもゴールにはなりませんでしたが、ガチガチに守るチェルシーディフェンスをバルサの哲学を持って崩した瞬間でした。

究極の技術と判断があれば、どんなに強固なディフェンスも崩すことができると思わせるような一戦でサッカーの未来が詰まっているような気がしました。ペップのサッカー哲学とこの当時のチームの選手があってこそのサッカーですので、どのチームも出来るわけではありませんが、今後技術を極めたチームがこのようなサッカーが出来ることを楽しみにしています。

今回はこの辺りにさせて頂きます。失礼致します。

グアルディオラのバルセロナのポゼッションサッカー 10-11

どうも皆さんこんにちは。footballpossessです。

今回もペップ・グアルディオラのポゼッションサッカーについてやっていこうと思います。

前回のペップ・グアルディオラ就任時のポゼッションサッカーの続きになります。

ペップのポゼッションサッカーはギャップで受けることで、ゾーンディフェンスを無力化したというのが導入部分でした。あくまで、ゴールを奪うための過程でパスを回しているのであり、決してボール保持だけを目的としたパス回しを行なっているのではないというのが、前回にあらすじです。

ペップといえばボールポゼッションのイメージですが、以前ペップの言葉の中で、「ゴールを奪えないようなボールポゼッションならば私はカウンターを好む」みたいなことを言っていました。

あくまで試合を優位に進めるための手段の一つだということです。

ではペップのポゼッションにはどのような狙いがあったのでしょうか。相手の対策を踏まえて見ていきましょう。

ペップ就任時のバルサのパス回しはくどいようですが、ギャップに入ることだとご説明致しました。

ペップのバルサは2008-09シーズンには6冠を達成したチームですので、当然相手は対策を練ってきます。

どのような対策を取ってきたかというと、スペースを与えないようにディフェンスの陣形をコンパクトにすることでした。特に攻撃においての危険エリアであるバイタルエリアのスペースをコンパクトにすることで、前線の選手にフリーで前を向かせないよう陣形を整えるチームが増えました。

バルサにとってのバイタルエリアはスピードアップを図る場所でしたので、このエリアにスペースが無いのは、悩ましい問題でした。スピードに変化を加えなければ、ゴールを奪うのは難しいからです。裏に蹴るだけの攻撃では、単調になり、小柄な選手が多いバルサには不利でした。ペップバルサとしてはどうしても、スピードアップが出来るエリアが欲しかったのです。

メッシの0トップシステムの理由

上記の問題を解決するために、取った策はメッシの0トップシステムでした。ペップ就任時からメッシの0トップを使用している試合はありましたが、本格的に威力を発揮したのはこのシーズンでしょう。

ではなぜメッシの0トップシステムが解決に繋がったのか。

ペップの目的はバイタルエリアを広げるために、相手の中盤を釣り出そうと考えました。つまり中盤を制圧しようとしました。そのために必要なのが中盤で数的優位を作ることであり、メッシを中盤で起用した真の理由です。

数的優位さえ作れれば、バルサの中盤はボールロストをせずにパスを回せる技術がありますので、中盤を崩せると考えたのでしょう。また中盤であれば、デフェンスラインを崩すよりも比較的容易に崩すことができます。

事実その采配は大成功し、メッシ、イニエスタ、シャビでワンツーなどで中盤のデフェンスを剥がし、バイタルエリアに侵入します。

3人の内の誰ががバイタルエリアに侵入したら、他の2人の内の1人が全速力で前へ走り出し、もう1人が後ろからカバーを踏まえたパスコースを作りつつ、走り出します。

つまり中盤を突破した段階でスピードアップが可能な状態を作り出したわけです。スピードアップが可能であれば後は味方のデフェンスと中盤を中心にパスを回し無駄なボールロストを減らしていきます。そしてチャンスがあれば中盤で崩し、スピードアップを図るというわけです。スピードアップした後はウイングや上がって来た中盤の選手にラストパスを送り、ゴールに迫ります。

このボール回しの緩急の変化に相手は付いていくことが出来ず、バルサは次々にチャンスを作り出すことに成功しました。

さらにメッシがスピードに乗ってバイタルエリアに侵入した際はシュートやドリブル突破でデフェンスラインを崩すことも可能です。攻撃により迫力が増すというわけです。

しかし相手もさらに対策を練り、中盤の人数を増やした場合は、バルサは3-4-3の形を取ります。右サイドバックのダニエウアウベスをウイングの位置に張らせ、右のウイングにいた、ペドロまたはビジャが中盤からパスを受けやすくするように中に入ってきます。

システム上は3-4-3ですが、ボールポゼッション中は3-5-2のようなポジショニングです。

この方法ならば、仮にメッシ、イニエスタ、シャビにマンツーマンでマークにつかれても中盤は5対3で2枚も数的優位が疲れますので、スピードアップの弊害は無くなります。

もし相手のセンターバックがマンツーマンにつけば、ワイドに張っている、ダニエウアウベス 、ビジャ、ペドロの裏抜けの餌食になります。

このようにしてバルサは攻撃のスイッチの変化を作ったということです。

前線からのハイプレスによるショートカウンター

バルサのもう一つの攻撃パターンとして実はショートカウンターがありました。ペップバルサの攻撃パターンとしてはあまりイメージはないかもしれませんが、ショートカウンターからのシュートというパターンもしばしば散見されております。

それを可能にしているのが前線からのハイプレスです。相手がボールを持った際にパスコースを切りながら全速力でプレッシャーをかけます。パスコースが限定されるので、セカンドデフェンスは限定されたパスの出どころに向かって全速力ででプレッシャーに行きます。これをボールが奪えるまで続けます。

例え相手のボールホルダーがセンターバックだろうが、キーパーだろうが続けます。パスカットに成功したらショートカウンターというわけです。

ショートカウンターは相手の守備陣形が崩れた状態で攻撃できるので、スピードに乗りやすいため、ペップは取り入れております。当時、バルサよりボール保持の上手いチームはおりませんので、相手はたまらず、前線へクリアが精一杯でした。

バルサのデフェンスラインは数的優位を作り、余りのディフェンダーを作るのが鉄則です。つまりクリアされたボールにも全速力で対応することが可能というわけです。

しかし、6秒以上相手にボールを持たれた場合はプレスをやめます。なぜ6秒かというとこれは大体の目安で、相手がボールを奪ってから落ち着かせるには大体6秒くらいかかるからと言われているからです。

つまり、ボールが落ち着いてしまう前に回収しようというのがペップバルサのハイプレスのルールでした。6秒以上経ち、ボールが落ち着いたら、1度守備陣形を整え、ゾーンディフェンスにシフトチェンジします。しかし、大抵の相手はバルサのプレスを剥がすことが出来ずにボールを前に蹴って回収されていました。

唯一突破の兆しを見せていたのは、CLノックアウトラウンド1回戦のアーセナルだった気がします。彼らはパスでバルサのプレスをかわしていきましたが、それはバルサ側も同じことで、結局ボール保持の上手いバルサが次のステージに進むことになりました。

このようにしてバルサは素早くボールを回収しボール保持の時間を増やしていったわけです。

まとめ

ペップバルサのボールポゼッションは決してボール保持が目的ではなく、バイタルエリア以上のスペースでのスピードの変化が目的でした。

あくまで試合を優位に進める且つゴール奪うための下準備といったところでしょうか。

ポゼッション率が高ければ、相手のチャンスを奪っている可能性は高いですが、同時に自分たちのシュートチャンスを減らしている可能性もあります。

ペップのバルサが強かったのは緩いポゼッションのパスを見せられてからの素早いスピードアップに相手が対応できなかったからかもしれません。その攻撃のメリハリとルールが当時のバルサを支えたいような気がします。

今回はこの辺りにさせて頂きます。失礼致します。

ペップ・グアルディオラ就任時のポゼッションサッカー

どうも皆さんこんにちは。footballpossessです。

今回はペップ・グアルディオラのポゼッションサッカーについてやっていこうと思います。

グアルディオラと言えばバルセロナのポゼッションスタイルで大成功したのはご存知ですよね。

ポゼッションと聞くとボールを保持し、攻撃の時間を増やすことでチャンスを増やしゴールに迫る。そして、相手にボールを持たさないことで、失点のリスクを減少させるのが目的のスタイルだというのは何となくわかると思います。

クライフの時代から言われている「7割のボール支配ができれば、80%の試合に勝つことができる」という言葉を受け継ぎ、システムを進化させたのがグアルディオラのサッカーでした。

グアルディオラのバルサは、圧倒的なクオリティで世界中に衝撃を与え、圧倒的な強さを見せつけていました。いわば、バルサ1強時代の到来です。グアルディオラのバルサ就任前はロナウジーニョ、カカ、クリスティアーノ・ロナウドの様な個の力が重要視されていた時代だったので、チームでゴールを奪うサッカーが強さを発揮した時に、衝撃を受けた方は少なくないかと思います。メッシ、イニエスタ、シャビ、ペドロ、ビジャの様な小柄な選手が活躍できることを証明した。瞬間でもありましたので、尚更インパクトは強かったと思います。

ではなぜペップのバルサはなぜこんなに衝撃を与えたのでしょうか。いくつかの理由があると思いますので順を追ってご説明致します。

ボール保持の復活

クライフの時代から提唱されていたボール保持ですが、ドリームチーム以降ボール保持に拘るチームは殆どありませんでした。ファンハール就任後シャビ、プジョルのようなカンテラの選手を起用しましたが、ポゼッションスタイルの確立まではしていませんでした。

ライカールト就任後もロナウジーニョ、エトーという選手が主力として活躍しましたが、ボール保持がメインではありません。前線の選手にいかにフリーでプレーをさせるかが重要視されていました。事実この当時はスペースが広大にありましたので、クラックが活躍できる条件が揃っていました。つまり、前線の選手の能力こそが、得点に結びつくという時代だったのです。

しかし、どんな優秀な選手も複数人で取り囲み、ドリブル、パスを封じられるとボールロストをする場面が多々見られるようになりました。1人の天才を止めるためにゾーンディフェンス、ゾーンプレスが強化されていきました。つまり、前線の選手が自由にプレー出来る時間とスペースがなくなってきたのです。

バルサも当時ロナウジーニョに依存しておりましたので、頭を悩ませていました。そこで就任したのがグアルディオラでした。彼が就任したのちのバルサはチームプレーを重視し、ポゼッションサッカーの復権に努めました。ご存知の通り。大成功を収めましたが、なぜ成功をおさめられたのでしょうか。

ゾーンディフェンスを崩壊させたギャップでの受け方

上記で述べたようにゾーンディフェンスが、強化されたことで、前線の選手に時間とスペースが与えられなくなり、チームプレーに乏しい選手は淘汰されています。

そもそもゾーンディフェンスとは何かというと、自分の担当エリアを振り分け、陣形をなるべく崩さないよう無駄な動きを減らし、ゴールを守ります。1人が抜かれても次、次と対応出来る部分が強みであります。

さらにサッキのゾーンプレスを組み入れることにより、ボールを中心としたプレスと陣形の整備を行うことで時間とスペースを奪っていくのがペップ就任時のディフェンスのトレンドでした。

しかし、ゾーンディフェンスの弱点を突き、完全に無効化したのがペップのポゼッションサッカーです。

ゾーンディフェンスの弱点とは何か、それはギャップです。

ギャップにつきましてはギャップ1 ギャップで受ける理由ギャップ2 三角形の外心で受けるギャップ3 等間隔で距離を取った位置ギャップ4 ディフェンスのライン上で受ける、をご覧下さい。

ゾーンディフェンスはマンマークとは違い最も近いディフェンダーがアタッカーに対してのアクションを行い、対応します。ですが最も近いディフェンダーを決定させられないギャップへの対応は決まり事がない限り、対応に遅れが出てしまします。

そこで、バルサの選手はギャップに陣取ることでディフェンスの役割を曖昧にさせました。誰がプレスに行くのか、誰がカバーに行くのかが曖昧になったのです。そんなチグハグなディフェンスだとバルサの選手はやりたい放題でした。特にシャビ、イニエスタ、メッシは狭いスペースでもプレーのできる選手なので、僅かな隙も見逃しませんでした。

チーム全員がギャップに陣取ることで常に誰かがフリーの状況を作りその選手にパスがわかることで、相手ディフェンスを後手に追い込むことに成功しました。

出典:http://footballtactics.net/appnew/

さらに、ペップ就任時の守備はFWがセンターバックにプレッシャーをかけるチームが多かったため、ディフェンスの間隔が間延びしているチームが多かったため、広いギャップが生まれやすかったのです。

出典:http://footballtactics.net/appnew/

バルサにとってギャップが広いのは追い風で、次次にギャップに入る事によって、パスコースを作り、ディフェンダーのプレッシャーをいなしておりました。パスを繋ぐのにストレスはなかったでしょう。もし、スペースが狭くなり複数人で奪いに来た場合はダイレクトやワンツーで角度を変え、逃げ場を作りながら新しい広大なスペースに展開する術をバルサの選手は持っていましたのでパス回しでのボールロストはほとんど見られませんでした。

2008−09シーズンのバルサがレアルを6−2で下した試合は特にこの様な場面が見られました。

このシーズンのバルサはボールポゼッションを意識しているというよりかは、相手のプレッシャーをパスでいなしていき、フリーなスペースでボールを受け相手ゴールに迫っていくというスタイルでした。ギャップで受け前を向く機会が多かったので、結果的にボールポゼッションが上がっていったのです。決してボールポゼッションがメインではないという事です。あくまでゴールを奪うための過程でしかなかったという事です。

長くなりそうなので、今回はこの辺りにさせて頂きます。それでは失礼致します。